殺戮都市
「……狩野、頼みがある。聞いてくれるか?」


この言葉を出した時点で、俺の心は決まっていた。


「なに?もしも私が生き返るって言うなら、内容によっては聞いてやらなくもないけど」


「じゃあ、聞いてくれ……」


今、この場で頼れるのは狩野しかいない。


俺の身体を乗っ取って、好き勝手暴れようとしたやつだけど。


上手く伝えられたかどうかは分からない。


狩野はその事について返事はしなかったし、分かっているかどうかも分からない。


だけど俺がいなくなった街で、俺がどうにか出来るはずがないから。


「クイーン、決まった。俺は、皆を生き返らせる道を選ぶ」


そう言うと、ずっと無表情だったクイーンが、ニヤリと口角を上げたのだ。


さらにパソコンを指差した先にある、ディスプレイに映し出された物に、俺は目を奪われた。


そこに映っていたものは、この街のリアルな3Dマップ。


こんな物を……この人は作り上げたのか。


街とシステムを構築して、きっとクイーンがその後を引き継いだんだろうな。


クイーン自体が、システムの中の一つなのに。


「では、ディスプレイに触れ、元の世界に戻るが良い」


指示され、俺はゆっくりとディスプレイに手を伸ばした。


「あ、それから……もしも主が生き返ったら、『全員生き返って、全員元の世界に戻る』って選択肢も作れって言っておいてくれ」


クイーンにそう言って、俺はディスプレイに手のひらを付けた。
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