殺戮都市
だけど、どこを探してもそのメールはなくて、俺じゃない俺が消したのか、それとも勝手に消滅したのかは分からないけれど、言い知れぬ奇妙さを感じた。


元の世界に戻りたいと願って、必死に戦ってきたのに、なんだか虚しさを感じる。


「俺、帰るわ」


何か違和感がある。


命のやり取りをしていた街から、何の危機感もない元の世界に戻ったからなのか、皆作り物のように思えてならない。


ゲームセンターを出て、明るい空を見上げて、普通なら思う事のない感情が生まれていた。


道行く人達は、自分達の本能を隠して生活しているようで……。


あの街では、敵同士なら遭遇即戦闘。


味方でも、気に入らなければ殺すという事が当たり前になっていたからそう思うのかな。


あんなイカれた街に行った時は、そんな状況はおかしいと思っていたけど……不思議と、元の世界に戻った今の方がおかしく感じるんだよな。


本物の世界、本物の人間、だけど人の心というか、感情が作り物のように見えて。


家に着くまでの間にすれ違った人達全てが、自分の感情を押し殺して生きている人形のように思えてならなかった。
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