殺戮都市
俺が、中身が理沙じゃない事を知っているからなのか知らずか、フフッと笑って見せる理沙。


「お前は……いや、この際お前が誰かとかどうでも良い。あの街で死んだ人達は生き返ったのか?」


「知らなーい。そんな事よりさ、早く学校行かなきゃ遅刻するよ?真治はいつものんびりしてるんだから」


質問をはぐらかして、俺の先を歩き出す理沙。


言いたい事だけ言って、返事しないのかよ。


久し振りに浴びる朝日心地良く感じながら、理沙を追い掛けようとせずにのんびりと学校へ向かって歩いていた。


一日経っても変わらない。


本物の街に、本物の太陽。


車も人も本物だけど……心は作り物。


理沙が言った、「馴染めてない」という言葉が今になって染みる。


あの街が恋しいわけじゃない。


だけど、あの街で出会った人達は、自分を偽らずに正直に生きていた。


正直に生きて、それでも人を助けようとしてくれたり、人を信用したり。


まあ、そんな人達は少数で、殆どの人達が自分の欲望のままに生きていたわけだけど。


俺は……どうだったんだ。


流されるままに生きて、この世界に戻って。


大切な人達をあの街で生き返らせるという選択をしたけど、助けたわけじゃない。
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