殺戮都市
「ちょっと……じょ、冗談でしょ!?」


「さあ、この女子高生が欲しい人は手を挙げて!!」


戸惑う女の子をよそに、男は進行を止めようとしない。


ここに集まった人達もそれに煽られて、一斉にステージに押し寄せた。


「お、おい!通せよ!!くそっ!」


明美さんの頭を抱え、何とかここから出ようと人の波を掻き分けて移動するけど、なかなか思うように進めない。


それでも何とかこの集団から離れた時には、もうすでに女の子の運命は決められていて……。


ステージには、みすぼらしい中年男性が、満面の笑みで皆に手を振っていた。


「わ、私も捕まったらあんな事されるのかな……」


不安そうに明美さんが呟く。


俺だって、捕まってしまったら、さっきの男のように拷問された挙句、なぶり殺しにされるんだろうな。


現実世界ではまずあり得ないような光景に、どうする事も出来ない。


人を殺す事は大罪で、悪のはずなのに。


この世界では、妙な正義感こそが悪。


やめろと飛び出して行った所で、誰も俺に加勢などしてくれないだろう。


「脱がせ!脱がせ!」


「殺せーーーーーっ!!」


人々に煽られて、中年男性が嫌がる女の子の制服を、ナイフで切り裂いていた。
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