サヨナラと秘密を用意して。
2人してだいぶ飲んだ。
でもさすがにこの季節の海の夜はもう寒い。
何も言わずに寄り添うようにくっついて温めあう。
緊張して、ビールが蒸発しそうだ。
陸がキスしていい?と聞いてくる。
あたしは、ちいさく、うん、と答える。
春ちゃんのキスとは違い、優しくないキス。
決して乱暴とかそういう意味ではないけれど、
そのまま、耳、首、と陸の唇が這う。
思わず漏れてしまう声に恥ずかしさを覚える。
「陸はきっと遊び人だね」
「昔はいっぱい遊んだけどね」
どうしてだろう。
他人の物なのに、チクリと胸が痛んだのは。
他人の物なら、割り切らなきゃやってられないのに。