サヨナラと秘密を用意して。


お風呂に入って、軽くメイクをして、簡単に荷物を
まとめて、元いた家に戻る。

ちゃんと掃除はしているのだろうか。洗濯も。


久しぶりに会う春ちゃん。
少し痩せたような気がする。

「痩せた?」

「あおちんがご飯作ってくれないからね。
いつもだいたいコンビニで買って食べてる」

「そうなんだ...ここにいる間は作るね」

「嬉しいよ。あおちんのご飯美味しいから」

初めて聞く言葉。また涙が出てくる。

「ずるいよ。今まで一度も言ってくれなかったのに」

「ごめんね。でもずっと感謝してたんだよ。毎日仕事なのに、
ちゃんとしたご飯作ってくれて、洗濯も掃除も完璧にこなしてて。
俺、1人になってから洗濯も掃除も全然ダメで。
いっぱいあおちんに甘えていたのがわかったよ」

「じゃあ、ご飯と掃除と洗濯だね」

もう笑っていた。
春ちゃんといる時間はひどく穏やかで緩く過ぎていく気がする。


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