フシギな片想い
「始めはすごく不安だったんだ。美雨ちゃんも人見知りそうだし、真央は不愛想だろう?初めの頃は美雨ちゃんも、真央にどう接したいいか解らないみたいだったし」
暗闇に目が慣れて、玲央さんがこっちを向いて笑っているのが解った。
目が潤んで見えるのは気のせいだろうか?
「玲央さんが前に言ってたけど、いい奴だって解ったから。そしたら前よりも真央に自然に話しかけられるようになったかな?」
そっかと言って、玲央さんは頷いた。少しの沈黙の後で、再びゆっくりと語り出した。
「真央はさ、すごく不器用なんだ。本当はさ、周りのことをキチンと見ていて、それに対する自分の考えを持っているのに、表現するのが下手なんだ。だから、誤解を招くこともある」
パーカーを差し出してくれた夜を思い出した。確かにぶっきらぼうな言い方だったなと笑いがこみ上げてくる。
「でも、本当は優しい子なんだ」
「はい、私もそう思います」
今度は素直な気持ちを口にすることが出来た。私たちは笑い合い、そのまま玲央さんは真央の話を始めた。
児童養護施設での話。
当時、玲央さんは施設の中でも年長で、子供たちの中でもお兄さん的存在だったらしい。
玲央さんの性格もあって、子供たちの世話だけではなく、みんなのごはんを作ってくれる調理師のおばさんの手伝いも率先してしていたのこと。
玲央さんが料理上手なのはこういった理由があったのだと納得した。