フシギな片想い


「どうしたんだよ、その頬?晴美さんにビンタ食らったのか?」


うんと答えると、「晴美さんってパワフルだな」と返って来た。


「何か怒らせるようなことしたのか?」


「うん、ついヒドイこと言っちゃった。ヒドイことを言ったのに、謝ろうとも思わなかった・・・」


声の震えが真央に聞こえないように、深呼吸を繰り返してから告げた。真央は何も言わなかった。


けれど、フードに真央の影が映っていたから、近くにいることは解った。


気持ちが落ち着いて、涙が止まった頃、真央の影が動いた。ガチャガチャと物音に、扉に向かう足音。


「出かけるの?」


思わず、フードを開けて、真央の背中に話掛けた。真央は薄手のパーカーを羽織り、スニーカーを履いていた。


「とりあえず、お兄にはメールしといた。美雨は俺の部屋にいるって。ちょっと、コンビニ行ってくる」


よっと立ち上がり、ドアノブに手を伸ばす。


「コンビニ行くならついでにアイスも買って来てほしい・・・」


「はぁ?」


真央がしかめっ面でこちらを振り向いた。泣いたら、冷たいものが食べたくなった。


「できれば、ハーゲ●ダッツのストロベリー・・・」


真央は私を無視して扉を閉めた。


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