フシギな片想い
真央は呆れた顔をしてツッコむ。
スプーンをビニールから取り出し、カップに手を伸ばす。
「あ、ちょっと待って。周りがちょっと溶けてからの方が食べごろなんだって。CMでやってた!」
真央は冷めた目で私を一瞥すると、
「面倒くせぇ」と呟き、カップをテーブルの上に放り、伸びをしながらクッションに倒れ込んだ。
けれども「おいしい食べ方」に付き合ってくれるらしい。
あ、そうだ!と言わんばかりに突然、がばっと前に屈むと、今度は袋の中から冷却シートを取り出した。
なぜ冷却シート?いきなり押しかけたから頭痛でもしたのかなと封を開ける真央を眺めていた。
不器用な手つきでシートの粘着部分を外し、
「ちょっと、こっち向け」と私に向き直る。
「え?」
驚いて、声が出てしまった。真央はむっつりとした表情のまま、ママに叩かれた頬に冷却シートを貼った。
それって、私のためだったんだ・・・そう解ると嬉しくて鼻を奥がツンとなった。まためそめそと泣き出したら、真央も困ると思って、涙は飲み込んだ。
本当は、本気で殴られたワケじゃないし、腫れたのは一瞬で、痛みももう引いていたんだけど、真央の好意はあり難く受け取ろう。
真央はセロファンをゴミ箱に捨てると、今度は漫画週刊誌を取り出して、ページを捲る。
「そろそろいいのか?」