フシギな片想い
「母親って存在がどういうものかお兄も俺も知らないから、憧れみたいなのがあって、お兄は年上の人が好きなのかって思った。始めはな」
でも、晴美さんと話す内にそうじゃないって解った。
シングルマザーで仕事バリバリしてて、それでいて底抜けに明るいい。
人見知りの俺にもガンガン迫って来る。
心の扉をシャットアウトしてもそれをこじ開ける位パワフルな人だと真央は続ける。
「人柄とか、前向きな所とかお兄はそういう晴美さんに惚れたんだなって思った。歳の差が霞むくらいに・・・お兄のことが好きな美雨に話す話じゃないけど」
フォローのつもりか真央は最後にそう付け足した。
いいよ、2人がどれだけお互いを思ってるかなんて、毎日一緒に生活してたら、痛い程解るし。
でも、真央の口から改めて聞くと、落ち込んでいる自分がいた。
「お兄には幸せになって欲しい。今まで苦労ばかりしてたから。晴美さんと出会ってから、お兄はすごく明るくなった。仕事も楽しいみたいだし、働きながらインテリアデザイナーの勉強もしてるし」
キャリアアップのためか、後に晴美さんの店で働く布石なのか解らないけれど、自分のための将来の展望があるなら、応援したいと真央は続けた。
真央をこんな風に自分の考えを話すのは初めてなので、相槌を打ちながらも、驚いていた。
無表情で無口で何を考えているのか全く分からない変な男の子だと思っていたのに、心の内には、玲央さんに対する熱い思いがあったんだ。
こんな話を私にしてくるのは、真っ暗でどんな顔をしているかお互い解らないからなのだろうか?