フシギな片想い


それとも、私に心を許してくれてるからなのだろうか?今の真央がどんな表情をしているのか気になる。


「俺は、お兄にとってはお荷物だ」


突然、ぼそりと真央が呟いた。


「お兄が幸せになるためには、俺が早いとこ自立しなきゃいけない。だから、高校を卒業したら、ここを出て行くつもりだった。金も貯めてるし」


そのためのバイトだったの?休日を返上してバイトに精を出す理由が解った。


始めから、高校卒業と同時に1人暮らしを始めるつもりだったんだ。


「お兄は見た目のほほんとしてて、何でも器用にこなすけど、実は陰ですごい努力をしてる。高校生の時からバイトを掛け持って、2人で暮らし始めたら家事もして、それでも何でもない風にああやって笑ってるんだ。俺が失敗しても、怒ったりしない。気付いたらお兄が俺の父親で母親だった」


それなのに、俺はお兄に恩を返せてない。


本来だったら、お兄が高校を卒業しても、俺は施設に残るはずだった。


けれど、お兄と離れたくなくて、我儘を通して一緒に施設を出た。


その時の俺は、自分がお兄の負担になるなんて思ってなかったから。


だからせめて、高校を卒業したら、自立してお兄を楽にしてあげたい。


自分のことだけ考えて欲しいんだと真央は続けた。


「私は、玲央さんが真央をお荷物なんて思ってない気がするけどなぁ」


真央がそんな意志を持っているなんて、知らなかった。

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