フシギな片想い


その思いが現在進行形なのをママは知らないでしょう?


お腹の辺りが熱くなって、一旦治まったはずのママに対する怒りがまた沸々と湧いて来た。


丁度タイミング良く、玄関の扉が開いたと思ったら、玲央さんが帰ってきたようだ。


階段の上で佇む私に気付き、「ただいま、美雨ちゃん」と笑顔で声を掛ける。


「玲央、おかえり」


ママが玲央さんに気付き、ひらひらと片手を振りながら、笑顔を向ける。


「いやぁ、急に雨が激しくなって、運転するのに視界が悪くて、ちょっと遅れちゃったよ。待ってて、すぐ着替えてくるから」


玲央さんはそう言って、パタパタと慌てながら、自分の部屋へと駆けこんで行った。


2階から玲央さんの様子を眺めていたママの腕から、ダイアリーを抜き取った。


「玲央さんには絶対、言わないで」


キツクに言ったにも関わらず、どうして?とママは首を傾げた。


「かわいい初恋の思い出じゃない?玲央、美雨が塾の生徒だったって気付いてないんでしょう?きっと、びっくりするわよ」


気付いてないからそのままにしといてよ。


「言ったら、絶対許さないから」


「そんなに怒らなくてもいいでしょ?解ったわよ、玲央には言わない。最近、怒りっぽいわよ、反抗期かしら?」


< 129 / 172 >

この作品をシェア

pagetop