フシギな片想い
鼻の奥がむず痒い、泣かないように気を張るだけで精いっぱいだった。
「ごめんね、美雨。びっくりさせて。受験を控えて、ピリピリしてたから言いづらくて・・・再婚っていっても今すぐに籍をいれようって訳じゃないの。苗字も今まで通り中瀬でいいしね」
ママが珍しく私に媚びを売る。
それとも、玲央先生の前だからだろうか?冷めた目でちらりと一瞥する。
「美雨も真央くんもお年頃だし、2人が高校を卒業するまでは籍は入れないでおこうって2人で決めたの。あ、真央くんもね美雨と同じ、この春から高校生なのよ」
ねぇと斜め向かいに座る玲央先生の弟に賛同を求める。
弟は軽く頭を下げただけで、何も言わなかった。
ちらりと向かいに座る玲央先生の弟を見た。
学ランのボタンが外れ、中のYシャツも第2ボタンまで外れていた。
いや、よく見るとボタンが無い。
おそらく、彼も今日卒業式で、同級生やら下級生やらに「ボタン下さい」って言われたんだろう。
学ランの全てのボタンじゃ足りなくて、更にYシャツのボタンもあげたのか?
「俺、モテるけど何か?」そうアピールしてるみたいで何かムカツク。
当の本人はそんなだらしなくシャツを全開したまま、黙々と料理を食べている。
今、気付いたけど、私たちがここに着いてから、彼は一言も声を発していなかった。