フシギな片想い


ママはぶつぶつ文句を言いながら、階段を降りて行った。


私は、ダイアリーを胸に抱えたまま、部屋に戻る。




天窓からは滝のように流れている雨が見える。


薄暗い部屋で電気も付けずに、ベッドの端に座り、天窓を眺めていた。


ドッドッドッ・・・激しく屋根を打ち付ける雨音が、何故か心地良かった。


「美雨ちゃん、僕たち出かけるよ~、映画観て帰ってくるから遅くなるよ」


玄関で2階に向かって叫ぶ玲央さんの声が聞こえて来た。


返事はしなかったけれど、了解の意味に捉えたらしい。


バタンと玄関のドアが閉まる音が、静かな家に響いた。


出窓から通りを覗くと、丁度、玲央さんのバンが車庫を出て行く所だった。


2人だけの記念日、2人だけの夜、2人だけの・・・2人。


私には決して踏み入れることが出来ない領域。ムカムカした気持ちが胃の辺りと支配する。


何で?何でママなの?何で玲央さんなの?___何で私じゃないの?


気付いたらぼたぼたと涙が零れ落ちていた。


泣きながら、ずっと大事にしていた玲央さんとの写真を、びりびりに引き裂いた。


ここに来て、今まで抑えつけていた思いが急に溢れ出して、はちきれそうだ。


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