フシギな片想い


ずっと子供の頃の夢。


思い出すのも嫌だったのに。


夢で現実が交差して、咄嗟に真央の手を握ってしまったのかもしれなかった。


ママの手の記憶と比べると、随分、ごつごつしてて筋張ってる。


男の子の手だ。


真央が着ていたはずのベストはなぜか私が着ていた。


真央はYシャツを腕まくりしたまま突っ伏している。


寒そうだなと思い、何か羽織る物を探すけれど、目ぼしいものはなかった。


部屋の外でバタバタと騒がしい足音が聞こえて来た。


何となく、嫌な予感がして、私は掛布団を頭から被って、息を殺す。


「娘が運ばれたって聞いたんですけど!?」


「・・・落ち着いて下さい。他の患者さんもいらっしゃいますので・・・」


「娘はどこなの?」




慌てた様子のママを看護師さんが宥める会話が筒抜けで聞こえた。


大げさ過ぎて恥ずかしい。


このまま眠ってしまいたいと思い、目を瞑った。


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