フシギな片想い


「美雨!」


勢いよく扉が開いたと思ったら、ママがつかつかと足音を立てて入って来た。


ママの第一声に驚いて、起き上った真央はのっそりと立ち上がり、ママにお辞儀をした。


すっと、繋いだ手をママに気付かれないように掛布団の下で解いた。


「・・・よかった。2人とも電話通じないし、メールも音沙汰ないから」


ママの後ろから玲央さんも追いかけて来たみたいだ。


声がする。


「ゴメン、映画館に行ってたから、お互い電源を落としてたんだ。それより、美雨ちゃんの様態は?」


「胃潰瘍だって、軽度だから薬で治るらしい。悪いけど、保護者が来たら、先生の所を訪ねるように言われてるから、お兄行って来てくれる?」


真央の指示に玲央さんは解ったと頷き、部屋を後にした。


ママは動揺しているのか「何で胃潰瘍?高校生なのに?」とぶつぶつ呟いていた。


「薬が効いてるみたいで、眠ってますからそっとして置いてあげて下さい。急にうずくまって、痛がり出したからびっくりしました、大事じゃなくてよかった」


真央は冷静に告げた。


壁に重ねてあった来客用のパイプ椅子を取り出し、座って下さいとママを促す。


ママはお礼を言って椅子に腰かけると、カリカリと爪を噛み出しだ。


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