フシギな片想い


「うん、玲央さん、いつもありがとう」


「いってらっしゃい」


「いってきます」


玲央さんに見送られ、玄関を出た。


煤けた木の扉に金のドアノブ。


数歩後ろに下がり、改めてママ自慢の家を眺める。


藍色の三角屋根に水色がかったグレーの壁。


玄関の所の壁には花の模様の入ったタイルが埋め込まれている。


壁に伝って蔓延るアイビーは引っ越して来た時よりも、ずっと成長していた。


今日も暑くなりそうだなとすでに高い位置にある太陽を確認してぼんやりと思った。


梅雨明け宣言って出てたんだっけ?今朝の天気予報では何て言ってたかなぁと考えていると、


「ぼさっとして何、突っ立てんでだ?」


部屋から出て来た真央に、後ろから頭を小突かれた。


「ちょっと物思いに耽ってただけだよ。はい、これ真央の分のお弁当」


グリーンのトートバッグを渡すと、真央はそれを背負ってたリュックの中に放り込んだ。


制服のズボンのポケットに両手を突っ込み、階段を駆け下りていく。


< 161 / 172 >

この作品をシェア

pagetop