フシギな片想い
その子の後ろを確認して、「1人なの?」と訊ねてみた。
「きゃ、児玉くんから話掛けられちゃった」とよく解らないことを口走った後で頷き、
「実は、友達と待ち合わせしてるんだ」と問いに答えた。
友達イコール何となく美雨が思い浮かんで、その子の後ろをもう一度確認してしまった。
けれども、同じ制服を着た子は見当たらない。
「児玉くんは?これからバイト?」
今度はその子に訊ねられた。
あぁと頷き、時間を確認する。
もうそろそろ店に向かおうと思い、漫画雑誌を数冊手に取る。
「児玉くんって漫画は雑誌を買う派なんだ?電子書籍の方が持ち歩きに便利じゃない?」
話を切り上げてレジに向かおうとしたら、その子も一緒に俺の後をついてきた。
店員がいる前でさらりとそんなことを告げる彼女に、少し呆れる。
漫画雑誌を買うのは、毎週、読み終わった雑誌を、育った養護施設に持っていってるからだった。
自分がガキの頃に、同じ養護施設出身のOBが、たまたま施設を訪れた時、貰った漫画雑誌が物凄く嬉しかったのを覚えてる。
児童書や図鑑なんかはあるけれど、そればかり読むのは退屈だった。
読み終えた漫画雑誌をあげる位だったら、自分の小遣いで何とかなるし、楽しみにしてくれてる子もいる。