フシギな片想い


「美雨がね、児玉くんはすごく優しいって褒めてたよ」


唐突にその子が語り出したので、思わず立ち止まってしまった。


「何かね、家の中に児玉くんがいるとすごく落ち着くんだって」


何でそんなこと今、俺に話すんだ?と思ったけれど、そう言われて悪い気はしなかった。


「あ、そぅ」と興味なさそうに返事をしたのは、何となく、恥ずかしかったからだ。


「いい弟になりそうって言ってた」


「弟?」


「だって、美雨の方が誕生日が早いんだって言ってたよ」


それはそうだけど。


それにしても、俺は美雨にとって弟なのか・・・弟って?学年一緒なのに・・・思わずはぁと溜息が出た。




横断歩道の信号待ちで、急にその子がクツクツと笑い出した。


「何?」


いきなりのことだったので、驚いて訊ねると、


「いや、児玉くんって意外と解りやすいんだなって思って、急に笑い出してゴメンね。びっくりしたよね?」


頷くと、その子は「ゴメン、ツボに嵌った」と暫く腹を抱えて笑っていた。


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