フシギな片想い


中学を卒業すると同時に引っ越すこと。


それがママとの約束だった。


今日が卒業式であっても、試験結果が出るのが数日後の生徒たちを比べると、推薦で合格が決まっている私は進路が決まってるだけ気が楽だったけれど、中学時代の思い出が素晴らしいものばかりだったから、高校生活はまた人間関係を1から築き上げないといけないと思うと不安が大きい。


恥ずかしいけれど、泣いてるのなんて私だけだ。


鼻を啜り、涙を拭いて檀上の幕にかかる日本国旗を見つめた。




「またね」


「また絶対、遊ぼうね」


「メールする」


たくさんの約束を交わし、私たちは教室を出た。


片手に持つ卒業アルバムの最後のページにはみんなの寄せ書きでいっぱいだ。


卒業証書の入った筒と中学指定のこれもダサいカバンを右肩にかけて校門を出た。


振り返り、最後に学び舎を眺めた。


もう、ここに通うことはないんだな。


大人への階段をまた一歩上るのが嬉しくもあり、寂しくもある。


ププーと車のクラクションが鳴り、後ろを振り返った。


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