フシギな片想い
ママは物が無くなって、がらんとしたキッチンの壁にもたれ、ミネラルウォーターを飲んでいた。
リビングの荷物も何もない。
私の部屋にある数個の段ボールを除いて、すでに引っ越し業者が新居へと向かっているのだと解った。
「何で、タイミング良く今日なの?」
普段だったら、仕事のはずなのに。
ママはにっと笑うと、引っ越しだからと動きやすい恰好をしているのかトレーニングウェアのポケットから携帯を取り出し、
「あんたの行動範囲はお・み・と・お・し」
と最後だけク●ステル調に言ってきた。
陰で私の友達と連絡を取っていたらしい。
私がどこにいて、いつ家に帰るのか全て解っていたみたいだ。
友人たちよ、ママのどんな口車に乗せられたのか・・・裏切り者~!
むすっと不機嫌を露にして、ママの車の後部座席に段ボールと一緒にどすんと腰を下ろした。
「新しい家を見たら嫌でも機嫌直るわよ!今までのマンションとは格が違うわ!なんせ一軒家なんだから!庭付きよ」
「美雨の部屋だって、今までの部屋の倍は広いんだから」
「いいじゃない~2人のイケメンと一緒に暮らせるのよ」