フシギな片想い
ママはハンドルを握ったまま、さっきからずっと1人で話している。
私は頬杖をついて、窓の外を眺める。
15年間過ごした土地を離れ、流れる景色を見つめながら、これから始まる新しい土地での新生活に期待を膨らませて_____いるはずがなかった。
車が停車し、目が覚めた。
不貞腐れたまま、いつの間にか眠ってしまったいたらしい。
携帯で時間を確認すると約1時間半程のドライブで新居に到着したらしい。
目が覚めた時、辺りが真っ暗だったので、もう夜?と一瞬はっとしたら、車がガレージに停められただけだった。
隣には見慣れないバンが停まっている。
どうやら、玲央さんの車らしかった。
「着いたわよ」
ママが明るく後ろを振り向きながら、私に声を掛けた。
車を降りるとうう~んと唸りながら伸びをし、後部座席の段ボールを手にする。
私も仕方ないので、ママの後について車から降りた。段ボールを抱えてガレージを出ると、すぐ隣にはアイアンの門扉があった。
凝った幾何学模様のデザインが施された門扉はママがオーダーメイドしたものだろう。
「中古物件なんだけど、大幅にリフォームしたの。なかなかイケてるでしょ?」