フシギな片想い


ママはハンドルを握ったまま、さっきからずっと1人で話している。


私は頬杖をついて、窓の外を眺める。


15年間過ごした土地を離れ、流れる景色を見つめながら、これから始まる新しい土地での新生活に期待を膨らませて_____いるはずがなかった。




車が停車し、目が覚めた。


不貞腐れたまま、いつの間にか眠ってしまったいたらしい。


携帯で時間を確認すると約1時間半程のドライブで新居に到着したらしい。


目が覚めた時、辺りが真っ暗だったので、もう夜?と一瞬はっとしたら、車がガレージに停められただけだった。


隣には見慣れないバンが停まっている。


どうやら、玲央さんの車らしかった。


「着いたわよ」


ママが明るく後ろを振り向きながら、私に声を掛けた。


車を降りるとうう~んと唸りながら伸びをし、後部座席の段ボールを手にする。


私も仕方ないので、ママの後について車から降りた。段ボールを抱えてガレージを出ると、すぐ隣にはアイアンの門扉があった。


凝った幾何学模様のデザインが施された門扉はママがオーダーメイドしたものだろう。


「中古物件なんだけど、大幅にリフォームしたの。なかなかイケてるでしょ?」


< 21 / 172 >

この作品をシェア

pagetop