フシギな片想い
「晴美(はるみ)さん!」
弾んだ声に振り向く。
晴美って一瞬誰だっけ?と思い、あぁ、ママの名前だったとすぐ思い出した。
「着いたんだ。言ってくれれば、荷物運んだのに」
玲央さんが笑顔で、ママから段ボールを受け取る。
「まだ車に残ってるの」とママが告げると、「いいよ、僕、やるから。運転疲れただろう?晴美さんは休みなよ」とママの肩を抱き、家の中へと促した。
自然に出た玲央さんの動作に、ちくりと胸が痛くなる。
外に出てきた玲央さんと目が合い、どうもと段ボールを抱えたままお辞儀をする。
「僕がやるよ。美雨ちゃんも、中で休んでて」
「いえ、これ、私の荷物ですし・・・」
「いいって、遠慮しないで」
にっこりと私に微笑むその笑顔は当時と変わらなかった。
とくんと胸が高鳴るのが聞こえ、彼に荷物を預けてしまった。
「車の荷物を全部運んだら、美雨ちゃんの新しい部屋に案内するよ。きっと気に入ると思うよ」
笑みを絶やさず、玲央さんは階段を降りて行った。
美雨ちゃん