フシギな片想い
言いかけたところで、「さあ、ここが美雨ちゃんの部屋だよ。開けてみて」と笑顔で振り返った。
玄関と同じような煤けた木の扉に金のドアノブを回す。
「うわぁ」思わず声に出てしまった。
今までの部屋は勉強机とベッドを置いたら、あとはスペースがない程の狭さだった。
けれど、新しい部屋はその倍以上はありそうだ。
細い板をつぎはぎしたような床に白を基調にした壁と家具には、ポイントでベビーピンクが入っている。
開いた出窓にはレースのカーテンがふわりと揺れ、フレーム付きのベッドはお姫様のベッドみたいにふかふかだ。
玲央さんが隣にいるのを忘れて、座りながらぼうんと跳ねて、感触を確かめた。
新しい生活をスタートさせるのにおいて、古い家具は一掃したらしい。
やたらと幅を取る勉強机や古くてぎしぎしと音の鳴るベッドから解放されたのは嬉しかった。
多少なりとも愛着はあったのだけれど・・・
丁度、三角屋根の斜面の部分にこの部屋はあるらしく、天井の壁の一部が斜めになっていた。
そこには採光窓が設けられていて、部屋がやたら明るい。
丁度、その下にベッドが配置されているので、朝起きて、一番に光を浴びるのを想像するのもステキだ。
全く、ここに来るまではママへの文句しかなかったのに、今ではすっかりこの部屋に魅了されているんだから、私ってホントに調子がいい。
見事!という程、ママは私の趣味を把握していた。