フシギな片想い
どうやら、玲央さん兄弟は私たちが引っ越すより前に、この新居での生活をスタートさせていたらしい。
インターネットの接続工事もすでに完了しているし、生活雑貨なんかも揃えてあって、買い出しに行く必要もないみたいだ。
大体の荷物の整理が終わる頃には窓の外はすっかり暗くなっていた。
時間を確認して、お腹すいたなぁとリビングに顔を出すと、玲央さんがキッチンに立っていた。
扉の前で呆然と立ち尽くしてる私に気付いて微笑む。
「お引越しということで、今日の夕飯は蕎麦にしてみたよ。もうすぐできるから晴美さんと真央を呼んできてくれるかな?」
菜箸とボールを片手にエプロン姿の玲央さんが声を掛ける。
天ぷらを揚げているらしかった。
じゅーと美味しそうな音が聞こえてくる。
玲央さんって・・・オールマイティ?料理も得意なんだ。
感心した所で、気付く。
「そういえば、ママの部屋は解るけど、弟さんの部屋ってどこ何ですか?全部の部屋、一通り見たけど、弟さんの部屋ってありましたっけ?」
「あぁ、そうだった。すっかり説明するの忘れてたよ」
玲央さんはあははと笑い、菜箸でびしっと玄関の方を差した。
「玄関の前に大きなプレハブみたいな小屋があったろう?あそこが真央の部屋なんだ」