フシギな片想い
「お兄さんが、もうすぐご飯だからって、呼びに来ただけだよ」
睨まれると怖いので、視線を合わせないようにしながら、私は答えた。
あ、そうと興味なさそうに呟いて、弟は私を通り越して、部屋の扉の前に立つ。
キーチェーンから部屋の鍵を取り出して、鍵穴を何やらガチャガチャと動かしている。
ふと気づいたように、こちらを振り向く。
「何、いつまでもそこに突っ立ってんだ?」
迷惑そうに眉間に皺を寄せる。
・・・だって、部屋の中がどうなってるのか気になったんだもん。
眼力にびびり、私はその場をそそくさと退散した。
玲央さん兄弟とママと4人で囲む初めての食卓。
私の隣にはママが、向いの席には弟が、初めて会ったレストランの時と同じ配置に座っている。
主に喋っているのはママと玲央さんで、私は時折、2人から投げ掛けられる会話に相槌を打つだけだった。
弟は相変わらずの不愛想ぶりで、蕎麦を黙々と食べ終わると食器を流しに片付け、とっとと自室に戻ってしまった。
何なのコイツ・・・愛想悪っ!思ったことが表情に出ていたらしい。
「ごめんね、素っ気ない弟で・・・」と玲央さんが詫びる。いいえと慌てて笑顔を作って、首を振った。