フシギな片想い


落としたコーヒーをブラックのままカップに注ぎ、啜っている。


「晴美さん、朝食は?」


「食べる時間なさそう。せっかく作ってくれたのに、ごめんね」


振り返って訊ねる玲央さんにママは右手を顔の前に立てて、詫びた。


「気にしなくていいよ。良かったら、これ、サンドウィッチ。本当はランチにって思ったけど、車の中ででも食べて」


玲央さんが紙袋をママに渡すと、


「さすが気が利くわね。ダーリンは」


紙袋を受け取り、飲みかけのカップを流しに置くと、玲央さんの肩をポンポンと叩いて、リビングを後にした。


廊下に出た所で顔だけ出して、「いってくるね~」と私たちに告げて、またバタバタしながら、玄関から出て行った。


ダーリンだって・・・朝っぱらから何、ラブラブ見せつけてくれちゃってるの、娘の前で・・・呆れた顔でママの消えた扉を眺めていた。


ふと視線を感じる。弟がじっと私を見ていた。


ヤバイ・・・今の顔見られてた?見つめ返すと、弟はさっと視線を外し、黙々とトーストを齧っていた。


・・・気のせいか。


ほっとして、残りの紅茶を飲み干した。


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