フシギな片想い


卒業式の日、玲央さんたちとの食事会の帰りにママからその辺の話は聞いていた。


玲央さんは小学生の時に、弟はまだ赤ちゃんの時に、施設に引き取られた。


どういった経緯で養護施設に入ることになったのかは、玲央さんは決して口にしないそうだ。


ただなんとなく話のニュアンスで、歳の離れた弟が異父兄弟らしいということだった。


玲央さんが子供の頃の話をすると嫌がるので、深く追求するつもりはないのだとママは言っていた。


大切なのは、過去を乗り越えてある今だからと。


「僕にとっては真央が唯一の家族だから、昔から何でも話すようにしているんだ。お喋りな僕と比べると、真央は歳を重ねる毎に無口になっていくけれどね。でも、これだけは断言出来るよ、真央はいい奴なんだ」


いい奴ね。


でも、兄に対しても無口な同い年の男子とどうやって会話したらいいんだろう?


会話例1・「その髪の色いいねぇ~、私も染めようかな~、この辺の美容室行ってるの?」


あ~、無理!こんなフランクに言えないよ。


あの超冷めた目で睨まれそうだ。


会話例2・「その曲、カッコいいね!CD借りていい?」


ていうかロックとか聞かないし!J-POPかテレビで流れてる洋楽くらいしか興味ないよ。「●枚目のアルバムの曲が___」とか説明されてもきっと話せないし。


とりあえず、挨拶からでいいか・・・


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