フシギな片想い
「あの・・・これ、コンビニで払ってもらったお金・・・」
あぁと真央は今思い出したような表情で小さく呟いた。
真央に払ってもらった分のお金を封筒に入れ、差し出した。
「別にいい」
お金はいらないっていうこと?でも、借りは作りたくなかった。
親しき中にも礼儀ありっていうしね、真央と親しい訳じゃないけど。
私は無理矢理、真央の腕を掴んで、手の平にお金の入った封筒を置いた。
私のしつこさに呆れたのか、真央は「じゃ、貰っとく」と封筒をジーンズのポケットに突っ込んだ。
「話終わったんなら、部屋戻るけど?」
会話はおしまいと言わんばかりに、真央はドアノブに手を伸ばした。最後に・・・勇気を出して、距離を近づける一言を。すぅと息を吸い込んだ。
「真央、さっきはありがとう。助かった」
言った!後で自分で自分を褒めてあげよう。玲央さんに「真央と仲良くしてやって」って言われたからね。
真央は後ろを向いたまま、けれども動作が一瞬止まった。
「・・・別に」
聞こえるか聞こえないか微妙な低めのボイスで呟き、そのまま部屋の扉は閉まった。
「これだけは断言出来るよ、真央はいい奴なんだ」耳の奥でここにはいないはずの玲央さんの声が聞こえた気がした。