フシギな片想い
「おはようございます」
リビングの扉を開くと、すでに玲央さんが朝食の準備をしていた。
エプロンの下にはスーツのズボンにベストを着、Yシャツの袖をまくっている。
料理をする玲央さんの姿はいつ見てもどきりとする。
「あ、美雨ちゃん、おはよう。いよいよ高校生だね。制服似合ってるよ」
一旦口にするのが恥ずかしいようなセリフであっても、玲央さんが言うとさり気なく聞こえるから不思議だ。
いい声だからかな?それに笑顔がプラスされることによってトキメキが倍増する。
「お手伝いします」
「ありがとう。お味噌汁の用意を頼むよ。お椀出してあるから」
「はーい」
ジャケットを椅子の背もたれに掛け、私もブラウスの袖を捲って、キッチンに向かう。
お手伝いをするのが、面倒くさいと思っていた私だったけれど、玲央さんと2人きりになれる時間が私にとって、まったり出来るひとときになっていた。
他愛のない話をしながら、同じ作業をする。
今まで気付かなかったような玲央さんの小さな癖を発見して、嬉しくなる。
ヤバイ、このままじゃまた玲央さんを好きになっちゃうよ。
頭の中でそう思っていても、憧れていた塾の先生が今こうして目の前にいて、生活を共にしている興奮の方が勝ってしまっている。