フシギな片想い
「ごめんね、待ったでしょう?」
ママが私には見せたことのないキラキラの笑顔でスーツ姿の男の人に訊ねる。
スタッフが椅子を引き、それに従って着席すると、
「美雨(みう)」
とママが私の名前を呼んだ。
ママの後ろでぼぅとしながら店内の様子を眺めていた私は我に返り、ママの隣、窓際の席に腰をおろす。
そこで初めて向かいの席に座る2人と対峙する。
「こちら、娘の美雨」
ママは笑みを浮かべたまま、左手を私に向け、自己紹介を始めた。
私はワケが解らず、ぺこりと頭を下げた。
顔を上げ、じっくりと2人の顔を確認して愕然とした。
「美雨、こちらが児玉玲央(こだまれお)さんとその弟の真央(まお)くん・・・」
紹介された玲央さんがにっこり微笑みながら、初めましてと私に握手を求めてきた。
私はその握手に答える。
「初めまして」と発せられた一言に軽く痛みを覚える。
まっすぐ彼を見ることが出来なかったし、緊張のせいで握った手の平がじっとりと湿っていた。