フシギな片想い
そんなかわいい芽衣子は話やすく、私たちはすぐに打ち解けた。
「美雨って県外の中学校だったんだね~。うちの学校って学区内の中学からの生徒が多いから、顔見知りの子結構いるけど、美雨って新顔って思ったもん。あ、このシャーペンかわいい~」
お互い帰宅部の私たちは放課後のチャイムが鳴ると、早々に学校を出て、商店街の雑貨屋に来ていた。
ちなみに桜前線は見頃を迎えていて、私たちの通う高校への坂道に並ぶ桜並木は、満開に咲きほこっていた。
これで、ますます春が来たって感じがするよね。
風情があるなぁ、これがニッポンの春の風景だよねとしみじみ思っていたら、隣の芽衣子が「桜、かわいい~」と発していたので、それを言うならキレイでしょと心の中で突っ込んだ。
芽衣子にとっては何でもかわいいらしい。
またもやかわいいアイテムを発見した芽衣子に「うん、かわいいシャーペンだね」って相槌打つ。
「シングルマザーだったママに恋人が出来て、その人の家族と一緒に住むことになったの。この辺に家を買って、引っ越して来たんだ」
隠していてもいつかはばれることだろうと思い、私は真実を新しい友達に告げた。
「フクザツなんだね~」
芽衣子はシャーペンを握りながらそう返した。
大げさに驚いたりするわけでもなく、ましてや私に同情するわけでもなく、1つの情報として芽衣子は受け流す。
その自然さが、いいなって思った。
「美雨のママって何してる人なの?シングルマザーってことは、バリバリのキャリアウーマン?あ、見て、この消しゴムもかわいい~」