フシギな片想い
「新しい友達できた?」
玲央さんの問いに、はいと答えた。
よかったねと玲央さんは頷く。
丁度その時、キッチンの棚に置いてあった玲央さんの携帯が鳴り、彼はちょっとごめんと席を立った。
電話の相手はママらしかった。
玲央さんは受け答えをしながら、リビングを出て行った。
向かいの席に座る真央は、豚の生姜焼きを黙々と食べている。
バイトを終えて帰宅した真央は、先にお風呂に入ったらしく、パーカーにスウェット姿だった。
芽衣子の言う「王子様の児玉くん像」を想像してみる。
頭に王冠をかぶり、不機嫌な表情のまま、袖の膨らんだシャツに、装飾品がじゃらじゃらとついたベスト、カボチャパンツに白タイツ、ブーツは先がくるんと尖っている。
ダメだ、想像しただけでも笑えてくる。お腹に力を入れて、笑いを堪えた。
「お前、今日、何で俺のバイト先に来たんだよ?」
これ見よがしにぼそりと呟くような声で、真央が私に訊ねる。
初めて真央から話しかけられたけれど、言い方がぶっきらぼうで、怒ってるようにも聞こえる。
「たまたまだよ。真央がバイトしてるなんて知らなかったもの。一緒にいた友達が、あの辺に住んでるの。友達の家に行く途中だっただけ」