フシギな片想い


ほとんど嘘だけど、何でもない風に答えた。


実際、芽衣子の憧れの人が真央だったって知って、私もびっくりしているんだから。


「知ってる奴に会いたくないから、わざわざ遠くのファミレスにしたのに・・・」


ぶつぶつ文句と言っている。


来るなって言いたいの?お客様は神様じゃないの?まぁ、でも、芽衣子も真央と私が知り合いって解ったから、頻繁にあのファミレスに通うことはなさそうだ。


「嫌なら、もう行かないから安心していいよ、王子様」


おっとっと、口が滑った。片手で口元を抑える。


真央がはぁ?と眉間に皺を寄せていた。




週末、珍しくママが早く帰って来たと思ったら、リビングにカバンを放り投げるなり、サンルームで洗濯物を取り込んでいた私に声を掛けた。


洗濯は、新しい家に引っ越してから私の唯一の仕事だ。


いくらママの恋人でも、男の人に洗濯をしてもらうのは気が引けた。


「イタリア行くの?仕事?今回はどれ位行くの?」


「交渉次第だけど、1週間くらいかな?」


乾いた洗濯物を入れた籠を持って、サンルームへと続くガラス戸を閉めた。


そのままテレビの前のクッションに腰かけて、洗濯物を畳む。ママはソファに腰を下ろした。


洗濯物を畳むのを手伝ってくれるつもりはないらしい。


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