フシギな片想い
玲央さんの話す話に笑い声を上げたり、途中、道の駅に寄って、ソフトクリームを食べたりした。
「新しい地に引っ越してきた美雨ちゃんに、観光スポットを案内しようって思ったんだ」
ハンドルを握りながら話す玲央さんは、大人の男の人だ。
よく、男の人の好きな仕草ランキングとかで、「車をバックさせる時に後ろを向きながら、ハンドルを片手で動かす」なんてあるけれど、こういう事かと納得した。
ドライブを楽しみながら観光スポットを巡る。
連休のため、家族連れが多くて、順路を進むだけで疲れてしまった牧場でランチを取り、何故か古墳を車窓から眺めて、今が見頃だというバラ園を訪れた。
暖かい春の風に揺れて香る、赤、白、ピンクを始めカラフルなバラの花園が見渡す限りに広がっている。
観光客がそれぞれに写真を取り合ったり、迷路のような庭園を散策したりしている。
花園に佇む玲央さんの後ろ姿を写メに収める。
少し伸びた襟足が、右にはねている。
気付いてないのかな?ぴろんと後頭部にあった寝癖を思い出す。
「うわ、蜂だ」と驚いてのけぞる玲央さんに思わず吹き出してしまう。
「花を見に来たのなんていつぶりだろう?小学校の遠足以来じゃないかな?」
「私もたぶんそれ位です」
他愛のない話をしながらバラ園を散歩する。先を歩く玲央さんを見つめる。
手を伸ばせば、彼の手を握れる位置にいるのに、私は伸ばしかけた手を握りしめ、ジャケットのポケットに突っ込んだ。