フシギな片想い


この家には玲央さんと私だけ。


今、玲央さんにキスしても、知っているのは私だけ。


ごくんと唾を飲み、玲央さんの唇に指で触れる。


暖かくて、柔らかい。指を頬に添えて、顔を近づけた。


キィと扉の開く音がした。


我に返り、顔を上げた。ドアノブを握ったままの真央が唖然とした表情で、私を見ていた。


目が合って、暫くは硬直していた。


・・・見られた!!


そう思ったら顔が一気に熱くなり、涙がぶわりと溢れてきた。


私、今、何しようとしてた?恥ずかしさと後悔で涙が流れてくる。真央に見られたくなくて、両手で顔を覆った。


目元を部屋着の袖で拭って、立ち上がり、立ち尽くす真央とすれ違い、玄関に向かう。


「どこ行くんだよ!」


慌てた真央がやっと、私の後ろ姿に声を掛けた。私はそれを無視して、玄関の扉を閉めた。


最悪だ。


私、あの瞬間____玲央さんにキスしたいって思った。ママの恋人なのに、初恋は終わったはずなのに___


階段を駆け下りると暗闇に向かって、走った。


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