フシギな片想い
商店街の通りへと続くこの道の人通りは結構多い。
ヒールを履いている女の人の足音。
犬の散歩をしているのか2重に聞こえる足音と、犬の吐息。
帰り道を急ぐカップル。
静かな闇の中で音だけ、耳元に届いた。
シャーと自転車を走らせる軽快な音が聞こえる。
だんだん近づいてくると思ったら、キキッと短いブレーキが鳴った。
ホイールが回転するプロペラのような音が園内に入って来て、私の目の前で止まった。
「何してんだよ?こんなとこで」
自転車に跨った真央が、冷めた目で私を見ていた。
目の前に真央がいることに、心臓が飛び出る位に驚いた。
「後、追ってきたの?」
「夜の住宅街を泣きながら爆走する女なんて、怪し過ぎるだろ?警察に職質されないでよかったな」
たっぷりの嫌味を吐き出した後で、真央はロードバイクを電灯の柱に括り付けて、私の隣に座った。
何で隣に座るの?気まずいだけなんだけど?私のことはほっといて、先に家に帰ってよ。
浮かんでくる文句を口にしたかったけれど、さっきのこと突っ込まれたらどうしようと、保守的になってしまう。
結局、膝を抱えたまま、膝小僧の上に顎を乗せて、足先を眺め、何も考えないようにしようと心を無にする。