フシギな片想い
「・・・さっきのこと、見なかったことにしとく・・・」
長い沈黙の後で、真央はぼそりと呟いた。
私は唇を噛みしめたまま、何も言えなかった。
「ていうか、お前の気持ちは何となく、知ってた」
「・・・嘘、いつから?」
思わず真央の顔を覗き込み、あっと口を押えた。
これじゃあ、玲央さんが好きだと言ってるのと同じだ。
「お前が引っ越してからすぐの頃だな、察しがいいもんで」
淡々とした口調で真央は述べた。視線は私ではなく、どこか遠くの方を見ていた。
「母親を見る目が、嫉妬に狂った女のように見えることがある」
「私、そんな風に見えてたんだ・・・」
いつも必要以上のことは話さないし、自分には関係ないって顔してるのに、真央は鋭い。
「晴美さんも楽観的な所があるのはしょうがないとして、お前に何も相談しないで勝手に恋人と同居を始めたのを理由にしても、母親に冷たく当たり過ぎだ。逆にお兄と話してる時は朗らかで、楽しそうだし、ピンと来た」
私が玲央さんを好きだって?
汗が引いてくると、体が急に寒くなって来た。
一足先に夏がやって来たんじゃないかと思う昼の陽気とと比べて、夜になったら急に温度が下がったみたいだ。膝を抱えたまま両手で二の腕を擦る。