フシギな片想い


「玲央さんって大学生の時、短期で塾講師のバイトしていた時なかった?」


真央を少し考えてから、どうだったか解らないと首を横に振った。


「いくつも掛け持ってたのは知ってるけど、全部は把握してない」


「小6の時、夏期講習を受けた塾の算数の担当が玲央さんだった。優しくて、笑顔がステキで、教え方が上手くて、女子の中で人気だったんよ、玲央先生は。初恋だった。夏休みの間だけだったけど、玲央先生はその後も私の憧れだったの」


何でこんな話を弟である真央に話してるんだろう?と自問して、情けなくなってくる。


でも、真央は何も言わず、私の話に耳を傾けていた。


「玲央さんは憧れの人で、淡い初恋の思い出だったのに、あんな風に再会するなんて思わなかったから・・・」


ママに恋人として紹介されるなんて。


一緒に暮らし始めて、玲央さんはママの恋人だって解ってるのに、玲央さんに惹かれてく自分を否定してたのに、でも気付いてしまった。


やっぱり私、玲央さんのことが好きだ。


あの時、玲央さんに触れて、玲央さんにキスしたいと思った。


「ママが嫌い。私の気持ちを知らないで、いつも自分勝手な行動ばかりで、玲央さんに愛されてるママが憎い・・・」


本音を吐き出したら、止まった涙がまた流れて来た。


体がまた熱くなって、嗚咽が漏れた。


真央にはカッコ悪い姿ばかり見られてる。きっと呆れられてるだろう。



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