フシギな片想い
「お前の父親ってどうしたんだ?死んだのか?」
長い沈黙の後で、真央が口を開いた。
唐突な質問に顔を上げた。
しゃくり上げながら、頷く。
「物心ついた時にはいなかった。幼稚園で私だけパパがいなくて、ママに訊いたことがあるの。病気で死んだって言ってた。でも、それが本当なのかは知らない」
ふぅんと真央は頷いた。
「じゃあ、ずっと2人で暮らしてたのか?」
「ううん、小学校の低学年の時はママの実家に住んでた。お婆ちゃんが面倒見てくれてた。でも、両親と折り合いが悪かったみたい。小学4年生の時に実家を出ることになって、それからはお婆ちゃんたちとも疎遠になった」
丁度、その辺りからママが仕事にのめり込むようになって、随分孤独な思いもした。
運動会や学習発表会などの行事も、授業参観すらろくに来てくれなかった。
一緒に夏期講習に行った友達が同じマンションに住んでたので、家事の出来ないママは、食費をその子のお母さんに払って、私の食事の面倒を見てもらってた。
ご飯が出来ると私の家にその子から電話が掛かってきて、その子家に行ってご飯を食べる。
目の前で広げられる一家団欒が羨ましくもあり、それを見せつけられているようで酷でもあった。
結局その子は中学入学をきっかけに引っ越すことになったので、それ以来、交流は無くなってしまったけれど、心のどこかで少し安堵している私がいた。