フシギな片想い


中には必至過ぎて、見ていられない子もいた。


休み時間もお昼休みもテキストに齧りついて、受験日が来る前に頭がパンクしちゃうんじゃないかってくらい。


友達もそれ位、必至に勉強に打ち込めばアウェイ感も気にならないだろうにと思うのだけれど、そうもいかないらしい。


「Aクラスの●●くんがカッコイイんだぁ。いつも模試で一番なの」


お昼休み。


生徒たちが息抜きに集まるラウンジで友達はほぅと溜息をついた。


友達の目の前には、専業主婦の彼女のお母さんが作った愛情たっぷりのお弁当が、私の目の前にはコンビニで買った野菜サンドとオレンジジュースが並ぶ。


「この場所からだと、A組の教室が見えるんだよね」


そう言いながら、彼女は私越しに後ろの教室に熱視線を送る。


振り返るとA組の教室で、男子のグループがお昼ご飯を取っていた。


あのグループで一番のイケメンが●●くんなのだそうだ。


午前の授業が終わったと同時に「ラウンジ行こう」と必至の形相で私の教室に来た彼女に呆然とした。


必死になる訳はそういうことだったのか・・・勉強しに塾に来てるんじゃないの?


でも、そういった楽しみの1つもないと、これから半年以上続く受験を乗り越えられないのかもしれない。


そして、私もそんな彼女のことをバカに出来ない。


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