フシギな片想い
芽衣子のおかしな妄想が始まったので、そっと距離を置く。
イケボは激しく同意だけど。
きっと、黒いスーツに身を包んだ玲央さんを想像しているに違いない。
蝶ネクタイに白手袋、銀縁メガネをしてたら最強だね。
「ところで、お兄さんっていくつなの?社会人だよね?」
ふと、妄想世界から帰ってきた芽衣子が訊ねる。
「今年、26って言ってたかな?」
そうなんだ~と私の答えに相槌を打つ。
「あの人が美雨のママの恋人なの?」
続けて訊ねる。うんと頷いた。
「へぇ~、ママの恋人って言ってたから、もっと年上の人かと思ったよ。児玉くん、随分年の離れたお兄さんいるんだなって思ってたけど」
「玲央さんとも10歳離れてるんだけどね」
「2人兄弟で両親は?」
「私もよく解らないけど・・・ママから聞くにはいないみたい」
養護施設の出身だとは伏せておこう。
私の口から噂話のように伝えるのはよくない気がする。