フシギな片想い


あの日以来、真央は私の名前を呼ぶようになった。


とは言っても、相変わらずの不愛想と寡黙っぷりで、玲央さんやママと一緒に食卓を囲む時は、ほとんど言葉を発しないから、名前を呼ぶのは稀なんだけれど。


「美雨」って初めて呼ばれた時は、心をぎゅっと掴まれたようで、むず痒かった気がする。


友達でもないし、弟(私の方が真央より約5カ月、誕生日が早いから)とも呼べないフシギな関係。


一歩、距離が近づいたのかな?


弱みを握られている焦りはいつの間に消えていた。


真央は沈黙を貫き通すと決めたらしい。


見た目、チャラくて強面なのに(目据わってるし)、「いい奴」という兄からの太鼓判に今なら、「私もそう思います」って即答できるだろう。


「今の、児玉くんだよね?」


「うん、帰ってたみたいだね」


目を丸くして扉を指さす芽衣子にそう訊かれて、はっとした。


また1人で色々考えてたみたいだ。


「あれ?真央は?」


リビングに降りて行くと、真央の姿はなかった。


「ん、先にご飯済ませて、また友達の家行くって出てったよ。そのまま泊まるってさ。その前に、美雨ちゃんを呼んで来てって頼んだんだけど。芽衣子ちゃんだっけ?ご飯はどれ位食べるのかな?」


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