フシギな片想い


真央とすれ違いでがっかり肩を落とす芽衣子は「ふつうでお願いします」と玲央さんに答えた。


テスト期間が終了した真央も、たぶん明日はバイトで1日いないだろうし。


土日はほぼ毎週バイト入れてるもんな。


部屋を見てみたいという芽衣子の密かな願望は次回まで先延ばしになりそうだ。


真央がいない代わりに芽衣子が真央の席に着き、玲央さんが作った手作りハンバーグを食べる。


普段の食生活では和食を中心としたメニューが多いけれど、今日は私の友達が来るということで、定番の洋食を作ってくれたみたいだ。


ハンバーグにミネストローネ、コーンとトマトの乗ったサラダが並ぶ。


ケチャップとソースを混ぜて作った素朴な味のハンバーグソースが美味しかった。


芽衣子もうっとりしながら食べていたので、執事姿の玲央さんを想像しながら食べていたのかもしれなかった。


学校生活のことを玲央さんを交えて3人で話していると、玄関先でバタバタと慌ただしい足音を聞こえ、ママが帰って来たのだと解った。


「おかえり、晴美さん」


「ただ今、あ~、疲れた~」


ママはリビングに顔を出すと、芽衣子を発見して、「美雨のお友達?」と訊ねた。


芽衣子はハンバーグを口に入れたまま、振り返り、


「はふ、お邪魔してまふ、島崎芽衣子れす」と自己紹介をしていた。きちんと言えてないし。


「ちょっと待って、すぐ着替えてくるからね!」


ママは、芽衣子に向かってにっこりと微笑むと階段を駆け上って行った。


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