鯉に咲く桜
……街は確かに、異様な雰囲気に包まれていた。

ビルの灯りはついている。それなのに人気が全くない。

噂に怯えているのか?まさか。

あやふやな噂ごときにこんなことにはならない。
それに加え被害にあっているのは妖怪だけ。

人間が実際被害にあったという情報はあがっていない。

妖気も何も感じな…、!!

「…、」

なんだ、この妖気は。
さっきまで何も感じなかったのに…。

「…ミィツケタ…」

!!
…感じたことのない妖気。
僕はドスを手にして無の構えをとる。

サァァ…

不気味な風が僕を包む。
その瞬間だった。

カキィンッ

僕のドスと相手の刃が初めて交わった。

「!?…、キサマ、」

「君が噂の魂胆って訳かい?
なるほど、気配を隠すのが上手な妖怪なようだね。
けれど残念だ。この僕に、君の力は通用しない。」

ただ、と僕は続ける。

「…君は一体どこから来た?君は日本の妖怪ではないようだ。
誰の差し金だい?吐いてもらうよ。」

ヒヒヒ、と不気味な笑い声をあげるそいつは、
刀、いや大きな鎌を手に僕から距離をとる。

「…どうやら貴様は小物妖怪ではないらしい。
良いだろう。俺は死神。
人間や妖怪の魂を刈り取る者。
我等欧州の妖怪がこの日ノ本を奪いに来た。
我等が手中に治め、更なる領土拡大を狙う。
…名を名乗れ。」
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