鯉に咲く桜
「“奴”はどうやら礼儀はあるらしい。
…“奴”は、自らを“死神”と名乗った。
…西洋の妖怪として、この日ノ本を新たな領土にしようと乗り込んできたようだね。」


!!…西洋の妖怪が、領土拡大の為にこの国を…?

「し、しかし、鯉桜様!
そのような情報はあがってきておりませんぞ!」

「信じないと?この僕が言っているのに?」

ぐっ、と口ごもる幹部。

そして、次の瞬間だった。
兄貴の雰囲気が、変わった。

「思い上がるなよ、一ツ目。
何も情報があがっていないといって、実際に何も起きていないわけではない。
自らの過信は、災厄を呼ぶ。貴様もいい加減学べ。」

普段の兄貴が柔なら、今の兄貴は剛。
そう、まるで昼と夜のリクオのように。

ただリクオと違うのは、どちらも同じ人格だと言うことだ。


「…正直、僕は領土とかそんなものはどうだっていい。
勝手にしていろという話だ。
だが、そうなれば被害を受けるのは避けようもない事実。
僕はそれを許していないだけだ。
もし危害を加え、僕達の平和を脅かすのなら容赦はしない。
誰がなんと言おうと、僕はその根源を潰す。」

邪魔する者は排除すれば良いだけの話だ、と言う兄貴。

「…そうだな、叔父貴の言う通りだ。
ただ、まだ大きな被害が出ていないと言うのも事実。
下手に行動を起こして向こうの怒りを買ってしまうのも面倒だ。
とりあえずは様子見だな。
鴉は上空からの警戒と警備を徹底しろ。何かあればすぐ報告。
猩影と黒、化猫は地上を任せた。
氷羅と青は学校でその噂とやらに耳を傾けろ。
河童は水中を頼む。奴等はどういう属性を持っているか分からないからな。
後は他の組のもんにどう知らせるかだが…。」

「四国はワシと納豆小僧に任せろ。
ちょいと狸と話もしたい。」

四国へは親父と納豆小僧が行くことになった。
鴉は護衛はどうのこうの言っていたが、親父はいつものように聞く耳持たずにこの部屋を出ていく。

< 13 / 21 >

この作品をシェア

pagetop