鯉に咲く桜
_________あぁ、遂に来てしまった。


「…、親父?何して…っ、叔父貴!?」


リクオまで来てしまったか。…それだけじゃないね。


「リクオ様ー!!、えぇ!?鯉桜様!?」


これまた騒がしいねぇ…。

「おうおう、騒がしいのう、相変わらず奴良組は。」

呆れたように笑う羽衣狐。
でもそれも笑うだけで僕の傍から離れようとはしない。

抱き着いたままだ。

「羽衣狐!!お前さん、うちの兄貴に何してんだい!」

鯉伴はとても怒っているらしい。
普段はあんなに飄々としてるくせに、よく分からない弟だ。

「…貴様、失礼じゃぞ。」

ムスッと眉間にシワを寄せて言う羽衣狐。

思わず僕は声をあげて笑う。
まさか、羽衣狐がこんなにコロコロ表情を変える日が来るなんてね。

「…鯉伴。リクオも。そんな怒らなくても大丈夫だよ。」

よ、と羽衣狐を抱き上げる。
正確には片腕に乗せる、だけど。

「さて、羽衣狐。僕の屋敷においで。
みんなに、僕達のことを教えないとね。」

僕は羽衣狐を抱いたまま鯉伴達に背を向けて歩き始める。

「僕達の、こと…?」

戸惑ったように僕の言葉を繰り返す鯉伴。
それに答えたのは僕ではなく、羽衣狐だった。

「そう、妾達のこと。
妾と鯉桜の、幾度とない、愛しき逢瀬のこと。」

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