鯉に咲く桜
「鯉伴ー!!!どこに行ったぁぁぁぁ!!」

屋敷に首無の怒号が聞こえる。
それに思わず苦笑する。またあの弟は隙を見て逃げ出したらしい。

と、思っていたら前から当の本人が嫌そうに歩いてくる。

「…おはよう、鯉伴。首無怒ってるよ。」

「お?おう、兄貴かい。良いんだよ、放っときゃ。
もーあいつ護衛護衛ってうるせぇのなんの。」

悪態をつく鯉伴。でもね、鯉伴。

「…鯉伴、顔、緩んでるよ。」

兄貴!と怒る鯉伴をおいて笑いながら去る。

ここは暖かい。みんな笑ってる。

「あ、鯉桜叔父貴!おはようごぜぇやす!」

「おはよう、猩影。来ていたんだね。」

狒々の息子でリクオと同じ妖怪と人間の間に生まれた半妖。
今は関東大猿会を頑張って治めている。

「はい!今日学校が創立記念とかで休みなんで!
叔父貴はこれからお仕事ですかい?」

「うん、そうだよ。」

「はぁ、そうっすか。どうですかい?
学校の保健医とやらは。」

そう。僕の昼間の仕事。
それはリクオが通う学校の保健医をしていること。

姿も声も少し変えているからバレることはない。
学校は以外と色んな情報が入ってくる。

今どきの高校生は何かと情報を持っている。

それが正しいのかどうかは別としてだ。

だから僕は保健医として色々情報を集め続けている。

そしてそれが少しでも疑わしければ夜にそれを確かめる。

それが、参謀の僕としての、役目。
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