鯉に咲く桜
「ふぅ…。巷では夜になると神隠しにあう、か…。」

これは、多くの生徒から聞いたもの。

夜、ある時間帯を境に街は異様な雰囲気に包まれるらしい。
被害も着々と増えてきている。

そして、そのときに必ず九尾の狐が現れるらしい。

九尾の狐。そんな妖怪など、この関東にはいない。
いるとすれば…。
しかし、“彼女”は今は故郷に戻ってここにはいないはず。

畏れも感じない。…隠しているのか?
それなら何故…?

…これは、確かめる必要がある。
今奴良組はやっとのことで落ち着いている。

こんな些細なことでリクオの手を煩わせることはない。

と言っても、リクオも恐らくは噂のことは知っているだろう。


ここの生徒の中でも噂は大きくなっている。

リクオは心配性だからね。
ちょっとでも疑わしいことがあればそれを自分で確かめようとする。

その前に、僕が確かめて、それが本当なら…僕が手を下す。


「…そろそろ闇の時間が始まる。」

日は大分落ちてきている。
ここからは、僕達闇に生きる者達の時間だ。

それにあわせて僕の姿も妖怪の姿へと変わる。
鯉伴と違って、昼の間は人間の姿だから。

真っ黒な鯉伴の髪に対して、僕の髪は金髪と銀髪。
父さんとリクオの髪色があわさったようなもの。

それにあわせて妖力も増す。

…さぁ、行こうか。
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