恋の神様はどこにいる?

「何ぼーっと突っ立ってんだよ。お前も手伝え」

「え? あ、うん」

「玉葱の皮くらい剥けるだろ?」

いけない、いけない。

性格はどうであれ、やっぱり志貴はどこから見てもイケメンで。キッチンに立つ姿は人気料理店のシェフ並みにカッコよくて、目が離せなくなってしまっていた。

志貴から玉葱を受け取ると、皮を剥く。

今晩のメニューは、塩焼きそば。

志貴の得意料理らしく、『海鮮と野菜がたっぷりの栄養満点料理で、俺の自慢の一品だ』と買い物中ずっと豪語していた。

それはもう、耳にタコが出来るくらいに。

だから、お手並み拝見とばかりに見ていたんだけど。

豪語していただけのことはあるかもしれない。

野菜を切るのもスピーディーだし、形も全部同じ大きさに揃えてある。エビやアサリは丁寧に下処理され、イカも野菜に合わせた大きさにカットされた。

「スゴい……」

「そうか? こんなこと、誰でもできるだろ」

「私、できない」

「だろうな」

さも当たり前のように言うもんだからカチンと来たけれど、本当にできないから文句のひとつも返せない。

志貴の意地悪。もう少し、優しい言葉を掛けてくれてもいいんじゃないの?

一応私も女の子なわけだし……。




< 102 / 254 >

この作品をシェア

pagetop